Git で 領収書を管理したいので法律の観点から大丈夫なのか税務署に電話で聞いてみました。
コンテキスト
- Amazon や Alibaba などの EC サイトで日々の買い物をしてる
- 領収書を紙で保管するのは面倒
概要
- Git で領収書の訂正削除を管理で大丈夫そう
- 税務署に電話で相談できる、納税者の権利として活用するとよさそう。
- 税務署の回答は公開されてる情報を参照するだけなので判断はしてくれない
単語解説
電子帳簿保存法
ペーパーレス推進を目的として諸々の記録を電子データで保存できるようにするための法律
電子データとして領収書を保存するときにデータの訂正削除を行ったときに記録が残るシステムを利用するのが必要
電子データとして Amazon 等から受け取り保存するときに必要になる要件は以下の4つです。
- タイムスタンプが押された状態でデータを受け取る
- 受け取った後に受け取り側がタイムスタンプを付与
- データの訂正削除を行った場合に記録が残るようにする or 訂正削除ができないシステムを利用
- 訂正削除の防止のための事務処理規定を作成、運用、備え付け
また、検索、表示ができる状態を整える必要があります。
最後の2つの要件は普通に達成できるとして、問題は最初の4つの要件です。
タイムスタンプが押された状態の領収書を受け取るのはAmazon 等では現実的ではないため受け取る側でタイムスタンプを押す必要があります。
しかし、タイムスタンプを付与するためには専用のサービスを契約する必要があり費用も足元を見たいい商売しています。
また、事務処理規定の作成も大規模事業者ならば選択肢に入るかと思います。
ということで データの訂正削除を行ったときに記録が残るシステム
or データの訂正削除をできないシステムを利用する
になります。
訂正削除ができないシステム、こちらも専用のサービスを契約する必要が出てきます。
そのため、現実的には データの訂正削除を行ったときに記録が残るシステム
しか選択肢に残りませんでした。
領収書の訂正削除の記録を残すためには
訂正削除の記録を残せるシステムの定義はこのようになっています。
電磁的記録の訂正又は削除を行った場合には、訂正・削除前の電磁的記録の訂正・削除の
内容について、記録・保存を行うとともに、事後に検索・閲覧・出力ができるシステム
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0020002-072_5.pdf
訂正削除の記録を残せる手段を考えた結果Gitが良さそう
訂正削除の記録を残せる手段をいろいろ考えてみました。
Google Drive or One Drive の変更記録
Google Drive や OneDrive などのクラウドストレージには変更記録を自動で残してくれる機能があります。
しかし、それらの機能は 一定日数までしか記録に残せない(or Enterprise な契約必須) やそれぞれのクラウドストレージにロックされてしまうため選択肢から外しました。
変更記録を残すためのサービスを契約
先ほども触れましたが、家計簿ソフトなどでも類似の機能があるようです。 しかし、家計簿ソフトにロックされてしまうのを懸念し選択肢から外しました。
選ばれたのは Git でした
エンジニアが普段から慣れているバージョン管理ソフトである Git を利用して訂正削除を残すのが良さそうと判断しました。
Git を使い領収書の訂正削除を記録するフロー
- 領収書を受け取り Google Drive へ保存
- Git コマンドを使い add, commit
- Google Drive が自動でクラウドに同期, ローカルにもコピーは残る
ここでのポイントは Google Drive のローカルクライアントの上で実行することです。
自動でバックアップを取ってくれます。
Google Drive から OneDrive へ移行することになってもGit に変更情報が入っているためロックされません!
ただ制約として同時に編集すると壊れる危険があるため1台のパソコンから作業するに留めておきます...
Git を使い領収書の訂正削除を記録する上での懸念点
以上のフローで領収書の管理しても税務調査の時に否認されてはたまりません。
という事で懸念点を洗い出してみました。
- Git log で表示される情報を税務調査時に表示しても大丈夫か
- 変更履歴検索時に Git 以外のツールも連携して大丈夫か(e.g., grep fork and more...)
- 訂正削除時に手動で記録を残しても大丈夫か
Git log で表示されるログ情報を税務調査時に表示してもいいのか
Git log は 規則性のある形で表示でき、文字を容易に識別できるため良さそうと判断した。
「整然とした形式及び明瞭な状態」とは、書面により作成される場合の帳簿書類に準じた規則性を有する形式で出力され、かつ、出力される文字を容易に識別することができる状態をいう。
法第4条((国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等))関係|国税庁
Git の履歴を検索
現在使っているシステムで検索機能を完結する必要がないため、 Git 以外のツールも組み合わせれるため余裕そう。
git log
+ grep
もしくは、 Git GUI tool を使って履歴を検索できるようにすれば良さそう。
現在使用しているシステムにより検索できなくても差し支えありません。
蓄積された記録事項から設定した条件に該当する記録事項を探し出すことができ、かつ、検索により探し出された記録事項のみが、ディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で出力される機能をいう。この場合、検索項目について記録事項がない電磁的記録を検索できる機能を含むことに留意する
法第4条((国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等))関係|国税庁
訂正削除時に手動で記録を残しても大丈夫か書いてない...
国税庁のウェブサイトを探しても結論づけれる文章を見つけることができませんでした。
そのため、国税庁の確定申告相談室的なところに電話しました。
しかし、窓口の人は既存のドキュメントを参照して結果を返すだけのようで法律の隙間を判断してくれなかったです...
そのため、税務署の個人課税部門(記帳指導担当)の人に電話しました。
2日ほど待った後に結果をもらいました。
訂正削除の記録が残っていることしか確認しない
Git、個別のツールが該当するかの回答はできない
訂正削除を行った後に手動か自動で記録が残っているかは記載していない
税務調査時には訂正削除の記録を Git で取ってあることを言えば大丈夫
との回答が返ってきました。
税務署に聞いたのに公開されているドキュメントの情報が返って来ただけで判断してもらえなかったのは残念でしたが無料で電話でできる内容としては良さそう。
まとめ
自分の考えている 「Git で領収書の訂正削除を保存する」作戦はうまく働きそうです。
税金関係は自己責任で
情報源
情報源をまとめます。
割とここに情報まとまってるので隅々まで見れば理解できると思う。
その他付随して調査した内容
領収書を電子データのまま保存する上で届出は必要なのか
自分の場合は紙で領収書を貰わないため全て電子データで受け取っています。
その場合は、届けは必要ないと判断しました。
Q
問1 電子取引の制度はどのような内容となっていますか。
A
電子取引を開始する場合には、税務署に対して申請書を提出する必要はありません。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0020002-072_5.pdf
スマホアプリを利用した決済の場合領収書はどうなるのか
Q
いわゆるスマホアプリによる決済を行いましたが、この際にアプリ提供事業者から利 用明細等を受領する行為は、電子取引に該当しますか。
A
いわゆるスマホアプリを利用した際に、アプリ提供事業者から受領する利用明細に係る内容 には、通常、支払日時、支払先、支払金額等が記載されていることから、法第2条第6号に規 定する取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書 その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)に該当し、その取引情報の授受を電磁的方 式より行う場合には、電子取引に該当します。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0020002-072_5.pdf